石榴舎ブログ 『俳句は自伝』 |                      by Toyokazu Suzuki

今月の一句 <七月>


本州の最北端の氷旗    飯島 晴子


 遺句集『平日』(平成 13・4・ 20、角川書店)所収。平成 11年 7月、長女素子と下北半島 3泊の旅中の作。同時作に、

     野生馬の足踏みかはす音晩夏
     玫瑰の匂ひに淫しゐたりけり
     安宿に棘うごく海胆すすりけり
     涼しく割るあすなろの木の割箸を

など。同年作の、
   
     葛の花来るなと言つたではないか

は、鬱々たる激情を吐露した神話的世界を思わせる一句だ。

 以下、『平日』より。

     小豆疎らの小豆筵よ晩節よ           (平11)
     白ふくろふ羽総振(ぶる)ひして呉れし     ( 〃 )  
     七十の終の初空仰ぎけり            (平12)
     飾とす堪忍袋の切れつ端(ぱし)        ( 〃 )
     大雪にぽつかりと吾れ八十歳          ( 〃 )
     初めての杖下ろさむと白牡丹          ( 〃 )
     ミモザ咲きとりたる歳(とし)のかぶさり来   ( 〃 )
     気ばらしのせめて昼顔摘み溜めて        ( 〃 )
     いつとなく機嫌ほぐるる茄子の花        ( 〃 )
     丹田に力を入れて浮いて来い          ( 〃 ) 
 
 平成12 年6月6日、死去。素子さんに頼まれて、晴子の指導をうけた故佐々木碩夫と遺品整理の手伝いをした。紙紐で結ばれた句帳の束を開くと、句の断片や、句材のメモで埋まっていた。
 食卓兼用の机が仕事場だった。質素な応接室から、奔放自在の想像力を駆使して、未踏の境地を切り拓いた。

 筆まめな晴子は、よく手紙やはがきをくれた。

 念願だった『飯島晴子読本』(平13・10・30、俳句研究別冊)を企画編集した。愛着のつよい一冊だ。
この「読本」をもとに、随筆集『葛の花』(平15・7・20、富士見書房)を出版した。文章家晴子の力量を証する聡明かつ濃密な文集である。朝日新聞書評欄に、コラムニスト栗田亘が好意的な批評を書いてくれた。

 イイジマハルコという名前には、なつかしい響きがある。晦渋と平明、瞋恚と滑稽、伝統に狎れず、前衛を止揚して、独自の境地を開拓した。


飯島晴子を憶ふ              
葛咲くやわれら此岸にいましばし     赤榴子


『葛の花』カバー  <フランス・フォンフロワド修道院。写真・永島靖子>


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Category : 七月
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