石榴舎ブログ 『俳句は自伝』 |                      by Toyokazu Suzuki

今月の一句 <一月>


よろこびはかなしみに似し冬牡丹  山口 青邨


明治25年盛岡市生まれ。みちのくびとの素朴な人柄が万人に愛された。

     みちのくの雪深ければ雪女郎         青 邨
     みちのくの鮭は醜し吾もみちのく
     みちのくの町はいぶせき氷柱かな   

昭和12年、44歳の青邨はベルリン工科大学に留学をしている。2年間の海外生活でも多くの句を残した。海外詠の先駆者と言えよう。

       伯林
     舞姫はリラの花よりも濃くにほふ
     ライラック咲けば伯林のことなどを
     
科学者でありながら抒情的な詩人的感性をそなえていた。
「俳句の写生は科学と全く同じであった。複雑なものを単純化して一つの法則を作ることは科学者のすることであった。」「科学も文学もものを観察することは同じだ。ただその後の処理の方法が違ふ。」と言っている。

夏の頃、杉並区和田の青邨を訪ねたところ、当時83歳の青邨は、和服の尻をはしょり、庭をはいずりまわるように草むしりをしていた。雑草園の名のとおり、仰々しい門構えなどなく無造作な、青邨の人柄そのもののような青邨邸であった。


年始客ひとりに妻の華やげる    赤榴子


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昭和50年7月26日、東京杉並・雑草園にて

Category : 一月
Tag : 山口青邨
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今月の一句 <睦月>

     
    旧景が闇を脱ぎゆく大旦  中村草田男

 昭和35年(58歳)の年頭吟。第8句集『時機(とき)』所収。
 大旦(おおあした)は元旦、元朝のこと。旧景(きゅうけい)は、旧年・旧冬の景色。国語辞典や漢和辞典には出てこない言葉、草田男の造語だろう。「闇を脱ぎゆく」という擬人法は、造化の力を象徴する。<鵙鳴くや十九で入りし造化の門>は草田男44歳のときの作。「造化にしたがひて四時(しいじ)を友とす」という造化随順は、草田男の根本精神だった。
 
正月の句は、明るく晴れやかに、祝慶の気持ちをこめて詠まなければいけない。「俳人自照」と前書する<初鴉大虚鳥(おほをそどり)こそ光あれ>は、老年の草田男の祝福と祈願とを、大虚鳥(烏の蔑称)に託して詠んだもの。「各句をしてめでたく誕生せしめたい」という作句姿勢は、年頭吟においても変わらなかった。

        
      老いてなほ紅顔のひと初御空    赤榴子




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Category : 一月
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